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東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所

本研究課題の目的concept

概要


 本課題は、イスラーム金融やハラール産業、ツーリズムなど今日注目を集めているイスラームに基づく産業における経済活動、およびこれら商品・サービスに対するムスリムによる生産や消費といった経済行為に着目し、人類学、地域研究、経営学、経済学など複数のディシプリン、および東・東南・南・中央アジア、中東、北アフリカなど複数の地域を対象とする研究者による共同研究を通じて、これらの現象の現代的な意味と意義を明らかにする。


研究の背景


 1970年代以降のイスラーム復興には、ムスリム個々人の内面的な信仰意識の高まりに基づく儀礼的行為の積極的な実践という側面と、政治や社会など公共領域でのイスラームに基づく諸現象の活性化という側面がある。これらと同時に、見逃すことのできない調査分析対象でありながらこれまで解明が進んでいなかった分野が、経済領域である。ムスリムの消費者としての行動は、彼ら/彼女らの内面的信仰を表象するミクロな事象であり、各国政府による産業振興政策、あるいは企業によるイスラームに準拠した商品・サービスの提供はよりマクロな事象である。このミクロなムスリム個々人の内面的信仰と、マクロな政治社会的動向との紐帯として機能しているのが、経済領域である。産業分野や経済行為について、その背景にあるイスラーム法、政府の振興政策、市場規模、ムスリムの消費マインドと価値合理性に基づく経済行動などを明らかにするとともに、地域や産業分野を横断する形でイスラームが経済に対していかに影響を与えているかを解明することを目指す。


期待される研究成果


 各地域で観察されるイスラームに基づく経済活動・行為について、各メンバーによる特定のディシプリンに応じた調査分析に基づく事象の解明はもちろん、これらを踏まえ、地域やディシプリンを越えた、経済をめぐる現代のムスリムやイスラーム諸国のミクロ・マクロな動向、およびこれらの相互連関の実態が明らかになることが期待できる。また、これらを明らかにすることによって、日本の産業界を中心とする社会的ニーズにも応えられると期待できる。


研究の実施計画


○ 研究方法
 本課題においては、メンバーの研究対象に応じて複数のサブ・グループを構成する。想定している研究対象は、「イスラーム金融」「ハラール産業」「イスラームと地域経済」「ムスリム女性のファッション」「イスラーム・グッズ」である。各サブ・グループ内においては、メンバーの対象地域、すなわち東・東南・南・中央アジア、中東、北アフリカ等の各地域が重複しないよう配慮する。このような研究体制を構築することにより、イスラームをめぐる経済活動・行為のあり方を、産業および地域を横断する形で解明することが可能となると考えられる。
 1年につき3-4回程度の頻度で、研究会を開催する。各研究会は、サブ・グループに対応する形で実施する。これにより、特定のテーマ、産業に関する地域間の相互比較と、他のサブ・グループに属する近接地域の研究者からの議論を通じて、理解・認識・解明を深めることができる。また、AA研海外拠点の一つであるコタキナバル・リエゾン・オフィスとの提携を行い、在外研究者による報告のための招聘、あるいは現地でのワークショップの共催などを図っていく。

○ 成果の公開方法
 成果公開の方法として、(1)ウェブサイトの開設とこれを通じての情報公開、(2)3年目での公開シンポジウムの実施、(3)成果論集の作成、の3点を計画している。具体的な実施時期と内容については、下記の通りである。

○ 実施計画:1-2年目
・ 本課題のウェブサイトを開設する。これを通じて、研究会開催情報や報告要旨の公開、リレー・エッセー等をアップロードする。
・ 年に3-4回の頻度で、メンバーを報告者とする研究会を実施する。各研究会においては、サブ・グループをその時の研究会のテーマとし、当該サブ・グループのメンバーが報告を行う。2年間を通じて、全てのサブ・グループ、所属メンバーが報告を行うものとする。また、コタキナバル・リエゾン・オフィスと連携し、海外研究者による報告もこれに加える。

○ 実施計画:3年目
・ 1-2年目の研究成果を公開することを目的として、全メンバーによる公開シンポジウムを実施する。
・ 同じく研究成果の公開のため、成果論集を全メンバーで執筆する。成果論集作成にあたっては、合評会を実施する。近似のテーマ、近接地域を担当する他のメンバーからのレビューを行うことにより、論文集の水準の向上を図る。




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アジア・アフリカ言語文化研究所

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